白石
1 吉原1と呼ばれた女
十年も前の恋が消えていかない。たった1%も減っていかない。罵りあって、憎み合って別れたかった。そうすればきっと、忘れられたのに。そんな綺麗事でしかないだろう言い訳を抱えて、今日も私は大勢の男を騙し続ける。
「したくてしてるソープ嬢やないねん。親のな、借金払わなあかんし、仕方なかってん。でもな、大丈夫や。今はもう、こうやってダーリンがいてくれるはるから。」
私のそんな嘘に癒される為に大金を払う男達がいる。たった二時間の疑似恋愛。私はいつから「愛してる」を売れる女に成り下がってしまったんだろう。なんて考える事すら今はもうない。だって仕方なかったもの。生きていくために。あの人がいない人生を生きていくためには、こうやって愛を売り、愛を買う事しか私には出来なかった。そう、例えそれが「転落人生」だと言われても。
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